最高裁判所第三小法廷 昭和53年(行ツ)57号 判決 1978年10月31日
高知市高須一七六四番地一
上告人
有限会社 セトフアニチュア
右代表者代表取締役
小笠原史郎
右訴訟代理人弁護士
小松幸雄
高知市本町五丁目六番一五号
被上告人
高知税務署長 高橋實
右当事者間の高松高等裁判所昭和五二年(行コ)第四号課税処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五三年二月二八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人小松幸雄の上告理由について
所論の点に関する原審の判断は正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 環昌一 裁判官 高辻正己 裁判官 服部高顯)
(昭和五三年(行ツ)第五七号 上告人 有限会社セトフアニチュア)
上告代理人小松幸雄の上告理由
原審判決には判決に影響をおよぼすこと明らかな法令の違背がある。すなわち、物品税は、消費税としての本質から消費者が税負担すべきもので、物品税法上消費者が税を負担すべき旨の明記した規定がないことは、それは本質上あまりにも明らかなことであり、明記の必要がないまでのことである。
物品税法第三条第二項の規定は、物品の製造者に物品税納税義務を課して、取引の対価として受領する金額に物品税相当の金額を含めしめ、その結果、税を消費者に負担させるための税徴収上の技術的規定に過ぎないものであり、物品税相当金額を取引の相手から受領し得ない場合(物品の製造業者が物品税相当額を消費者に負担させたくともそれができない場合)においても、なお物品の製造者にのみ税を負担させるための規定とはその本質上到底考えられないところのものである。
前記法条については、右のとおり解釈すべきものであるにもかかわらず、原審判決は、物品の製造者が物品税相当額を消費者に転嫁することができたかどうかということは関係がなく、製造者が当該物品を製造場から移出するという事実行為があれば課税の原因が発生し、物品税納付義務が生ずると解釈したことは明らかに誤りである。
本件事件は、上告人が物品税相当額を消費者に負担させたくともそれができない事案である。そうであるにもかかわらず、本件被上告人の課税処分が適法であるした原審判決には法令の違背があると云わざるを得ない。
以上